Oral Physician海外研修で受けた「マルメ研修」の感想

6月12日から19日まで、Oral Physician海外研修で、スウェーデンマルメ大学にて講義をうけてきました。特にここ10年ほどは、自分なりに駆け抜けてきたような歯科医師人生だったように思います。そんな私にとって、マルメ研修は期待以上のものであり、残りの歯科医師人生をどう過ごしていくべきかを教えてくれました。

スウェーデンマルメ大学にて2005年に山形県酒田市の日吉歯科診療所でoral physician育成コースを受講しました。自分の診療所を持ち、自分の仕事の経過をみるようになった私は、削ってはつめの繰り返し、歯を抜いては入れ歯を作るという仕事がなんだか嫌になってきてはいたが、どうしてよいのかわからなかったのです。そんな時、熊谷先生のセミナーの案内が目に留まったのです。「そうだ、山形に勉強しに行こう!」日吉歯科診療所は、徹底的に患者さんの利益を追求するためのシステムを実践している診療所です。そこを訪ねた時、歯科医としての自分が恥ずかしくなりました。そして、できる範囲でそのシステムを参考にし、模倣しようと決心しました。私がそう決めたせいで、スッタフにもするべき仕事が増えました。口腔内写真を撮るだけでも、歯科衛生士たちは大変な努力でした。今でもゴールに向かい、亀の歩みのささやかな診療所ではあります。しかし今があるのは、治療中心から予防中心に考えを改める機会をくださった熊谷先生との出会いでした。そして、いつも私を助けてくれるスタッフに恵まれたからと感謝しております。

そして今回、スウェーデンマルメ研修を受講できたのも、熊谷先生のお陰です。
スウェーデンは、時間が静かに流れていくところでした。ホテルの大きな窓から眺める景色は、まるで生きている絵画を見ているようで、久々に心が休まりました。早寝早起きの生活も忘れていたことです。
自分が行ってきた感染歯質の除去、充填、欠損補綴…医療の行為として大切なことではありますが、修復することは治癒ではありません。永久にもつ修復物は存在せず、新たな問題として材料の破折や二次カリエスの問題が起こるからです。
齲蝕と診断することが大切なのではなく、疑わしきは観察し、進行を抑制する姿勢をとるべきである。臨床で感じることは、歯周病で歯を抜くことと同じくらいに治療した歯を抜くことが多い事。だからといって、何でも経過観察するのではありません。これを実践するには、リスクアセスメントをきちんと行うことが必須である。

スウェーデンマルメ大学にてWhose teeth is it? 医療では患者さん自身が主役であり、私たち専門職の適切な援助を加えることが大切なことである。慢性疾患の内科受診と同様に、定期的な受診で自分の歯を守ることに代価を支払う価値があることを理解してもらえてこそ、医療である。
「最も質の高い治療は予防歯科です。歯を削ったりつめたりするような歯科医療ではなく、良い口腔衛生状態を維持する予防に力を注ぐべきです。私たちはすでに齲蝕や歯周病がなぜ起こるのか、どうしたらそれらの口腔疾患を予防できるか、さらにどのようにしてそれらの疾患を予測するかもわかっています。」アクセルソン博士の言葉です。日本の現在の歯科医療体制では、難しいこともあると思いますが…マルメ研修で、アクセルソン博士がおっしゃった言葉の意味を再確認できたと思います。技術的なことを教えていただく研修も大切だと思いますが、何かもっと大切なことを教えていただいたと思います。