「デンマークに学ぶ福祉視察20周年記念高齢者福祉フォーラム2014」に参加して

長谷川です。
4月13日の日曜日に「デンマークに学ぶ福祉視察20周年記念 高齢者福祉フォーラム2014」が日野社会教育センターで開催されました。

デンマークは「寝たきり老人がいない国」と言われています。

9年前、私はデンマークのロスキレ市に滞在し、澤渡夏代ブラントさんのコーディネートで高齢者福祉施設、補助器具センター、精神疾患患者用プライエムなどをたっぷり視察するプログラムに参加してきました。私の耳にこびりついているのは「自己決定」「自己責任」という言葉。デンマークの国のビジョンは自分でものを考え、判断できる自立した人間を育てることだそう。
日本の消費税にあたる付加価値税は25%、所得税は50~65%、障害者もその中から税金を払っているみな納税者です。
義務教育は9年です。日本のように、いい高校や大学に入るために教育するのではなく、生きるための教育をします。日本との大きな違いは教育と職業が連携されていることです。

このフォーラムでは、日野市長の大坪さんから「高齢社会と日野市」のお話もありました。日野市においては、要支援の認定をうけている高齢者が3多摩地区で1番多いとのことです。この先、介護保険の見直しが行われる見通しの中で、大変厳しい現実があることを知りました。

ところで、私は4姉妹です。私だけが離れて住んでいて、姉や妹たちは母の傍で生活しています。最近になって、母も年相応の物忘れなのか認知症の初期なのか、少し心配なところがでてきました。父が早く亡くなりましたが、母のおかげで今の私があります。母の人生の最後に寂しい思いだけはさせたくないと感じています。自分がその立場にならないと、社会に目を向けることが難しいものですね。私はデンマークに行って、社会の中の自分の責任をやっと自覚することができました。遅すぎかもですが…

フォーラムでは、リレートークということで指名をうけたので、今回は、その時お話したことを書きます。

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2005年第14回デンマークに学ぶ高齢者福祉視察の旅に参加した歯科医師の長谷川と申します。

正直なところ、もともと高い志があってこの旅に参加したわけではありません。今から10年前の私は悩みの中にあり、とりあえずどこかへ出て行きたかったというのが本当の気持ちです。それ以前にも、何度か中能さんからお声をかけていただきましたが、その年なぜか行ってみようと思ったのです。

私は24才で歯科医師免許を取得してから、仕事を自分なりに一生懸命やってきました。でも、やっとほっとして周りを見たら、仕事以外のことを何も知らず興味も持たず生きてきた自分がいました。この旅に参加してまず驚いたことは、一緒に参加された方々が、社会のいろいろなことに関心を持ち自ら勉強し、自分のできる社会貢献をしていることでした。その頃、私は自分のことだけで頭がいっぱいでしたから。

1999年にケアマネの免許を取りました。
日野市社会福祉協議会で手話を習ったことで、聾の知人が増え、彼らが患者さんとして来院するようになりました。今も聾の患者さんは、15人ほど来院されています。そんな折、聾者から介護保険が始まるがよくわからないし、聾者のための高齢者施設もないし、将来が不安だと話しているのを聞きました。自分が何か彼らのためにできないかと思ったのが、ケアマネの免許を取得しようと思ったきっかけでした。
免許は取得できましたが、本業と両立できるような仕事ではなく、何もできずに今に至っています。

私は歯科医師なので、その中で自分のできることをやっていこうと思いました。それで、訪問診療と介護保険での口腔ケアや機能維持のためにできることをやらせていただいています。友人の歯科医が、「訪問診療なんて大変だね」なんて言いますが、来られなくなった患者さんのところにこちらから出向いていくことは自然なことだと思います。訪問をする歯科衛生士を見つけることも大変らしいのですが、なぜか訪問だけやりたいという歯科衛生士が面接にきて、ちょうどその時訪問を希望された患者さんがいて、そのまま細々と訪問診療を行っています。

訪問時間は、診療前や診療後、または休み時間に行っています。一般診療で疲れていて、正直「休みたい」と思うこともしばしばです。でも、特別な技術もない私の訪問を、とても喜んでくださる患者さんに出会い、訪問診療は私にとって、人間としての精神的満足の大きい仕事です。

診療室は多摩平団地の近くにあります。訪問先は、老老介護のご家庭が多く、介護する方の負担がとても大きいのを目の当たりにしました。
また、患者さんは独居の方も多く、日々の生活で不自由があってもすぐに手を貸してもらえないなど、さまざまな不安を聞くことが多いです。「老後はまだ先」と考えていた私でも、日本は安心して年をとれない国だと感じるようになりました。誰もが人生の最後が寂しい人生は嫌だろうと思います。

私は毎日追われるように生活しています。
そんな私にとって、デンマークはまるで時が止まったようなところでした。青く高い空を見たり、お花を見たり、本を読んだり・・・
特に早朝のお散歩は夜型の私には新鮮でした。

仕事を忘れ、ぼーっと何もしないという超贅沢な時間を過ごすことができました。そして、自分が社会の中の一人の自分であり、一人ひとりが大切にされる社会を目指し、自分のできることをやっていかなければならないと感じました。

いつも介助する方やご高齢の患者さんとお話をしながら考えていることがあります。今は二足のわらじは履けないので、すぐには実行できませんが…
たとえば公団の中に部屋を借りて、ご高齢の方や不自由をされている方のお手伝いができないかと思います。在宅で介護といっても、現状のシステムは介助者に負担を押し付けているだけです。夜中のおトイレのお世話で何度も起こされ熟睡できない事とか、介助者が急な入院をすすめられたが、誰にも介護を代わってもらえないため入院を諦めた事や、頑張りすぎて介護鬱になっている患者さんや…
介護でなくても、電球ひとつ交換することもご高齢の方には大変なことです。困ったときにすぐに手助けしてもらえれば、精神的なストレスもかなり軽減されるのではないでしょうか。

今すぐには無理ですが、人生の最後は社会貢献だと思っていますから。
私が夢を実行しようと思ったときには、ぜひ皆さん手を貸してください。
よろしくお願いします。