赤ちゃんのお口の発達

衛生士の別井です。

毎日すくすく成長する赤ちゃん。身長や体重だけでなく、お口の中も日々成長しています。乳幼児の時期のお口の発達は、将来の歯並びや健康に大きく関係します。子育て中のお父さん お母さんに是非知って頂きたいお話です。

赤ちゃんはオギャーと誕生してから歯が生えるまでの数ヶ月で、上顎の大きさは約1.5倍にもなるそうです。

赤ちゃんの顎の中にある乳歯は、いわゆるキレイな歯並びの場所で待機していません。大きな頭が狭い産道を通ってこられるよう、できるだけコンパクトに、という理由でしょう。前歯は前後に重なり、歯列も小さいです。ですが誕生してから顎が大きく成長する事で、歯が重ならずに並ぶ事のできるスペースができます。そのため乳歯が重ならずキレイに生えてくる事ができるのです。

その顎の成長に重要な役割を担っているのが舌です。産まれて間もない赤ちゃんがおっぱいや哺乳ビンに吸い付く行為は吸啜といい、生まれつき備わった原始反射です。口唇や顎の動きはあまり見られませんが、お口の中では活発に舌が動き、母乳やミルクを一生懸命飲んでいます。

お口の発達には、母乳やミルクをしっかり吸う事がとても大切です。ですが哺乳ビンの人工乳首のなかには、倒しただけでミルクが出てくる物があります。これでは赤ちゃんが舌をしっかりと動かして吸う必要がなくなるので、顎が十分に成長できない可能性があります。それだけでなく、常に出てくるミルクをせき止めるため、舌の動きや飲み込みに異常なクセがついてしまいます。これらのクセは将来的に不正咬合や発音異常を招いてしまうのです。

誤解しないでくださいね。哺乳ビンを使うのはいけない、と言っている訳ではありません。最近は人工乳首の開発も進んでいて、母乳を飲む時と同じような舌の動きになるよう作られた物も発売されています。哺乳ビンを使う際には、そのような商品を是非お選びください。

次に離乳食を始める時期についてのお話です。育児書などにも、だいたいの目安の月齢が書かれていますが、赤ちゃんそれぞれの成長に合わせて始めるのが望ましいと思います。目安としては「しっかりと首が座って5秒以上お座りができる」「スプーンを口に入れても舌で押し出さない」「人が食べているのに興味を示す」などが見られたら開始してみてください。始めのうち赤ちゃんは口唇をうまく閉じることができず、ほとんど離乳食を口の中に流し込むような状態になるかもしれません。でも、だんだん慣れてくれば、口の中にスプーンが入ると口唇を閉じるようになります。その時にスプーンをゆっくりと平行に抜くと、うまく食べさせることができます。

この時期は口唇をしっかり閉じる練習を行う大事な時期です。赤ちゃんが口唇を閉じたのを確認してからスプーンを抜くようにしましょう。しっかりと口を閉じることは、安全な飲み込みにも繋がります。

「時期」というのは、とても大切です。離乳食を始める時期、次のステップへ進む時期。例えば、最初に吸啜という原始反射のお話しをしました。この反射は成長とともに消失するのですが、離乳食を始める時期が早すぎると、この反射のために舌が活発に動くので、スプーンを押し出してしまい、うまく食べることができません。また、奥歯が生えていない時期に歯肉で潰すことができない食材などを与えると、噛んで細かくするという習慣が身に付かず、丸飲みする習慣が身に付いてしまうのです。これはもちろん窒息の原因になりますね。

赤ちゃんの月齢にとらわれず、是非お口の成長・能力を重視してあげてください。「食べる」という学習はきちんと段階を踏むことが重要です。段階を飛ばしてしまうと本当の意味での「食べる」能力や口腔機能は身に付きません。先にもお話したように異常な舌のクセが原因で歯並びが悪くなったり、発音が不明瞭になったりしますし、舌の位置や口唇の力の弱さが原因で口呼吸になれば、歯並びだけでなく全身の健康にも影響を及ぼします。

大きくなってから、このクセを直すのは本当に大変なんです。「口開いてるよ!」「口唇噛んじゃダメ!!」というスタッフの声を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか?私自身、この言葉を言わない日はありません。1度習慣になってしまうと、よほど意識しないと変えることは難しいです。将来の健康のため、赤ちゃんの時期にできること、たくさんのお父さん・お母さんに伝えていきたいなぁと思います。