母と暮らして

歯科衛生士 古田 喜代子

妹がつれあいの病気のため二人の介護は無理と、長年介護してくれていた98歳の母が夏のどしゃぶりの中、我が家にやってきました。要介護3と要介護1の家族がいる生活の忙しさは想像以上でした。

母は家の中でも車椅子生活、食事は大体自食できるがそれ以外はほぼ全介助です。移乗や下の着替えは「ヘルプ!!」と叫ぶと夫が駆けつけてくれるのは本当にありがたいです。

貧乏はしても…という母の矜持に育てられたと感じている私にとって、今の母は苦労をすべて忘れてしまったかのようです。

歯科衛生士として学んだことの多くを今母に取り入れながら、少しでも穏やかに暮らしてほしいと願っています。食事中に僅かなムセに気づいたので食事内容も注意しながら献立を考えていましたが、デイサービスに行きはじめてメニューを見ますとなんといろいろなものを出していただいていました。食形態を考えさせられました。ここでもパッククッキングが役立っています。

このような生活の中で、口腔ケアで訪問させていただいた患者様、ご家族を思い出しますととても励まされます!

ありがとうございました!!
院長先生はじめ長谷川歯科クリニックの皆様にも大変お世話になりました。
心より感謝申し上げます!


院長より

私が訪問診療を始めるきっかけは、衛生士の古田さんとの出会いからでした。

面接で「訪問診療をやりたいです」と言われた時は、困ったなというのが正直な思いでした。いままで来院できる元気な高齢者しか診ていなかったし、日々の診療をやっていくだけで精一杯の私は、訪問診療をやっていこうという予定もなかったからです。

しかし、その数日後、患者さんから往診の依頼があり、古田さんと訪問診療に出かけることとなります。もう十年以上前の話です。なぜかその後も訪問依頼が途切れることなく、今に至っています。いわゆる治療ではなく、廃用性症候群で数年固形物を召し上がらなかった患者さんが、おいしいと言ってユニバーサルデザインフードを口にした時は、診療室では経験できないうれしさがこみ上げました。

そして今…訪問用のポータブルユニットを購入し、古田さん以外の3人の衛生士も訪問診療に関わり、私は井口先生の嚥下補綴実践講習会に参加し、嚥下内視鏡まで購入してしまいました。

長い間勉強熱心な古田さんにはいろんなことを教えていただいたし、時には姉のように愚痴もたくさん聞いてもらいました。
本当にありがとうございました。