新年のご挨拶

院長の長谷川です。
松の内は過ぎてしまいましたが、皆様、お健やかに新年をお迎えのことと思います。
今年も患者さんのお口の健康を守れるよう、またそのことが全身の健康につながることをきちんとお伝えできる診療室であるように、スタッフ一同が学ぶことを怠らない診療所でありたいと思います。体力も大切な眼も年々衰えを感じます。でも、「学ぶ気持ちが無くなったら免許は返すべきだ」とおっしゃった熊谷先生のお言葉がいつも心の中にあり、私もそういう気持ちでこれからも歯科医師人生を歩んでいきたいと思っています。

Sさんとのこと
おととしの11月のブログに「Sさんとの再会」を載せましたが、Sさんは昨年の12月に老人ホームに入居されました。入れ歯の修理が終わったけれど、2年数か月の間ゼリーや栄養補助食品のみで生きてきたと伺ったときは、驚きとともに正直悲しかったです。Sさんは廃用性症候群でした。
衛生士の古田と一緒に、何とかSさんに口から食べてもらう事を目標とし、訪問を継続させていただきました。
古田は私の医院に訪問診療をしたいと志願してきた経験豊かな歯科衛生士です。訪問ひよっこの私は、いつも彼女にいろんな「きづき」をもらっています。

Sさんは要介護5。入れ歯は常にきれいでしたが、2本の残ったご自分の歯はプラークに埋もれていました。そして、Sさんの部屋は、常にビデオがながれていました。ある時、寝たきりのSさんがビデオのリモコンを操作したのを偶然目撃したのです。そう、できないと決めつけていたのが間違いだったのです。もしかしたら歯を自分で磨けるのではないのかと思い、歯ブラシを持たせてみました。それは健康な人と違ったかもしれないけれど、Sさんは自分で歯を磨き始めたのです。口腔周囲筋は食べることも話すこともほとんどなかったために、すっかり硬くなっていました。口腔ケアを行いながら、口腔周囲筋をマッサージ、健口体操…「何か召し上がりたいものありませんか」と尋ねてはみるものの、Sさんは「食べたくない」を繰り返すばかりでした。

春が来た頃、Sさんはえびせんを口にしました。それから、慎重に誤嚥しないように細心の注意を払い、食のスッテプを上げていきました。この過程では、多職種連携の必要性も痛感させていただきました。
そして、ついにSさんから「おいしい」という一言が聞けるようになったのです。大きな声で歌も歌うし、ユニバーサルフードの中から、今日はこれが食べたいと意志表示もするようになりました。「Sさん」とお声掛けすると、ニコッと笑みをうかべてくれました。今度は外に出てみたいと言ってくれないかなと古田と話していました。

でも、別れは急に来ました。独居の限界と判断されたのでしょう、12月に老人ホームに入居されました。Sさんとの再開時にたてた「口から食べてもらう」という目標は実現できましたが、介護保険の厳しい現実も垣間見たように思います。ご高齢になると人との関りが減り、口腔機能も衰えていきます。来院できる患者さんには機能を維持するための情報を積極的にお伝えしようと思いました。

私は、介護保険制度が始まって間もないH11年にケアマネの免許を取得しました。でも「絵に描いた餅」状態です。訪問診療を行うようになり、担当ケアマネの違いを肌で感じるようになりました。サービス担当者会議にお呼びがかかれば、衛生士と参加しています。多職種連携は必須だからです。口を通してしか見ることのなかった患者さんの背景を知ることも、関わっていく上ではとても大切なことだと思っています。そこで、今年再受講することにしました(歯科医からケアマネに転職するわけではありません)。後先考えず、思いたったが吉日とばかり行動してしまう私です。結果、申告や研修で忙しい1,2月に受講することになりました。休診日が多くなり、私自身のお休みがなくなり、ストレスが溜まりそうですが、なんとか乗りきって春を迎えたいと思っています。


今年も咲きました
シャコサボテンとシクラメン


DACユニバーサル2 ハンドピース(歯を削る器具)のオートクレーブを購入しました。
ヨーロッパの小型高圧蒸気滅菌器基準EN13060で定義されるクラスSの規格をクリアーするものです。これからも、安心・安全な医療を提供できるよう努力いたします。