ふと気づくと開業してから30年に突入していた。
ふと気づくと開業してから30年に突入していた。
私の姉にそんな話をしたら立派な胡蝶蘭を妹たちと一緒に送ってくれた。「祝 開業三十年」などと書いてあるものだから、多くの患者さんにおめでとうございますと声をかけられ、ちょっと恥ずかしい。「よくやってこれた」というのが正直な感想である。
自分は歯科医に向いていないと何度も思い、何度も仕事をやめたいと思った。でもなぜかそんなときに限り、患者さんの一言に救われたりもした。もう少し頑張ってみようか…これの繰り返しで今日まで来てしまったような気がする。
結局は仕事が好きみたいで、その好きな仕事で生計がたてられている。患者さんに感謝である。私はいろんな研修に参加しているつもりだが、「面白くためになる」と感じる研修は数少ない。岡崎先生の講演はまさに「面白くてためになる」ものだった。いつか患者さん向けに講演をしてもらいたいと数年前から考えていた。
私はSHTAというスタディグループに所属していて、そこで会員のための本を今年出版した。4月の初旬にその出版記念パーティーが行われ、岡崎先生がその本に寄稿した関係でパーティーに参加されていた。ダメもとで講演の依頼をすると、ここに連絡するようにと名刺をくださった。
どうせなら、「長谷川歯科クリニック30周年記念」として患者さんを講演会に招待することしようと決めた。先生はご多忙である。日程調整、会場探しはなかなか大変だったが、私にはもうすぐストレスフルな研修が待ち構えているので、先延ばしにしてもいいことはない。そう思い、最短日を選択し準備にかかった。
患者さんに来ていただくことを考えれば、会場はあそこしかない。電話をかけると、幸運にも会場がとれた。その後チラシを作り、来院された患者さんに紹介するという事を繰り返す。講演まであまり時間がなかったので、患者さん全てに案内はできなかったが、多くの患者さんから参加したいとお返事をいただいた。会場は100人定員だが、130人位まで大丈夫ですと説明を受けていた。私の目標は最低80人。受付には、50人位でしょうと言われたが、なんとなくそんなわけはないと思っていた。気づけば前日までに110人ほどの申し込みがあった。
スタッフが役割分担を自ら決めて、とても協力してくれた。私は講演のほかに、ひそかにあるスライドを流そうと目論んでいた。スタッフへの感謝である。私がここまで継続できたのは、スタッフの協力があったからこそと思っている。衛生士の2名は24年間私に付き合ってくれている。スーパー助手は20年。後から入った衛生士も10年を超えた。本当にありがたい。私はスタッフに恵まれたと思っている。PCが得意な姪にスライドを依頼し、当日朝に準備完了。
当日はみんな本当に来てくれるのか心配だったけれど、参加意思を示さずいきなり参加の方や一人の申し込みなのに数人で参加する方もいて120人位になっていたと思う。
岡崎先生には、第1部は「動物の口はふしぎがいっぱい」第2部は「口の中はふしぎがいっぱい」と題して期待通りのご講演をしていただきました。動物園でもフレイル対策をしていると知り、人間と変わらないことに驚きました。唯一残念だったのは、スタッフへのスライドを見ていたのがひとりだけで、あとのスタッフは患者さんのお世話でスライドの存在すら知らなかったと後から聞かされたことでした。グループラインに送り、スタッフに感謝を伝えました。
私は勉強する意欲がなくなったら、仕事はやめるつもりでいます。今は、とても幸せな形で30年を迎えられたことに感謝して、もう少し頑張ろうと思っています。