患者さんに寄り添って
カリエスフリー(虫歯ゼロ)の子供を増やすこと。これは幼少時より私のところに通院してくださる患者さんに対する、当医院の目標です。幼稚園の頃から来院している患者さんも、もう社会人になり、結婚して親になり…「私も年をとったものだ」嬉しい反面ちょっと複雑な思いです。
今日来院されたM君。私より担当の衛生士(土方)のほうが長いお付き合いです。
彼が来院したのはちょうど5年前。主訴は「歯の掃除をしたい」でした。口腔内は…ほぼ全部の歯の根元が白濁(脱灰:初期虫歯)という状態でした。一番驚いたのは、説明された本人に違いありません。だって、彼は虫歯治療のために来院したのではないのですから…彼のお口の中は治療跡がなく、自分はよい歯の持ち主だと思っていたに違いありません。口腔内写真を見た彼の顔は…絶句。そこで、唾液検査をうけてもらい、なぜ虫歯ができるのかを繰り返し説明し、フッ素塗布を行いました。
それから彼は、本当に真面目に、定期的に来院していました。
そして5年後…口腔内写真を初診時と比べた私はとても幸せな気持ちになりました。でも、残念なことに、私は何もしていません。白濁して崩れそうだった歯が、みごとに固くガラス状に(再石灰化)なっていました。すごいのは、気づいて実行したM君と、彼を見守りながらプロケアを継続してきたDH土方です。虫歯を見つけて、削って詰めることだけが治療でないとつくづく感じました。 口腔内写真をうれしそうに見ていた彼の顔は、少し誇らしげに見えました。彼はきっとこの状態を継続してくれると信じています。
少しでも、自分のお口の中に関心をもっていただくため、3月から小学生までの患者さんにデンタルノートを配布することにしました。
口は体の玄関です。生涯自分の歯で食べられるように、患者さんに寄り添っていくことができたら、歯科医療にかかわる者として、私はきっと幸せだと思います。