秋の楽しみ
私の記憶の中では、いつも生花が家の中に飾られていた。もちろん、それは母の仕業。けっして、大げさな花ではなく、お仏壇だったり、おトイレの窓辺だったり、台所だったり…お花がある生活は当たり前のことだった。
そして成長した私は、診療所の受付に自然にお花を飾るようになった。受付の二人には仕事を増やして申しわけないが、玄関にも鉢を置いている。「趣味の園芸」を片手に、勝手に寄せ植えをする。そして、お世話を丸投げしている始末。彼女たちのおかげで、シクラメンもハイビスカスも年を越え、次の年も花をつけた。感激だ!!
そんな私は、マンションのベランダでバラを育てている。ボレロ、プリンセスオブモナコ、ベラドンナ、そしてミニバラ。実はディズニーランドローズというバラをすでにだめにしてしまった。日当たり、風通し、土さえ気を配れば、勝手に成長してくれるものかと安易に考えていた。育てると決めたからには、命に責任をもたねばならない。反省し、それからバラ関連の本を読み、お世話が始まった。
朝目覚めるとベランダに行くのが日課になっている。お日様がでていると、うれしくなる。バラたちに水やりをしながら話しかける。そして、きちんと観察する。これは、失敗から学んだことだ。バラは難しいといわれるが、世話を頑張るとそれに応えてくれることがわかってきた。そう思うとわが子の世話よりやりがいがある。それに文句も言わないしね。
9月に入ってから、「夏の剪定」をした。バラは、秋に咲く花のために枝を整える必要があるらしい。赤線を引いた何冊かのテキストを片手に、私は必死にお世話をしている。秋バラは春の開花より花数や大きさが劣るらしいが、花色は鮮やかでその本来の色になるらしい…うっ、想像しただけで、わくわくする。
実は、やりたかったことはもうできている。それは、咲いたバラを部屋に飾ること。摘んだバラをペットボトルで作った(切っただけ)花瓶に挿し、眺めている。お花屋さんのそれとは姿かたちが異なるが、何ともいとおしくかわいい。きれいにお花が咲いたら、診療所の前に飾りたい。それが、次の目標。きっと、バラはたくさんの患者さんの心を癒してくれるに違いない。